ブリックスアンドモルタル産駒の特徴と傾向を分析

ブリックスアンドモルタル産駒の特徴と傾向を分析 競馬

2019年のアメリカ年度代表馬に輝き、芝中距離で無類の強さを誇ったブリックスアンドモルタル。日本では2020年より種牡馬として供用され、2023年に初年度産駒がデビューを迎えました。芝適性の高さと高い完成度から注目を集めている新種牡馬です。

血統背景

Giant’s Causeway Storm Cat Storm Bird Northern Dancer
South Ocean
Terlingua Secretariat
Crimson Saint
Mariah’s Storm Rahy Blushing Groom
Glorious Song
Immense Roberto
Imsodear
Beyond the Waves Ocean Crest Storm Bird Northern Dancer
South Ocean
S.S.Aroma Seattle Slew
Rare Bouquet
Excedent Exceller Vaguely Noble
Too Bald
Broadway Lullaby Stage Door Johnny
リットルブレツシング

ブリックスアンドモルタルは、父Giant’s Causeway×母Beyond the Wavesという血統構成から生まれた、スピード・早熟性・精神力を高次元で兼ね備えた米国型の名馬です。

血統上の最大の特徴は、父Storm Catと母父Ocean Crestの双方にStorm Birdの血を持つStorm Bird3×3の濃いインブリードが成立している点です。これにより、スピード・早熟性・前向きな気性といった要素が強調されており、安定した先行力と粘り強い末脚、仕上がりの早さにつながっています。

現役時代の実績

ブリックスアンドモルタルはアメリカ芝路線で活躍した名馬で、2017年にデビューすると4連勝で重賞制覇を達成。その後一時休養を挟んで2018年末に復帰し、2019年には驚異の快進撃を見せました。

復帰初戦のペガサスワールドカップターフ(GI)を皮切りに、ムニス記念(II)、ターフクラシックS(GI)、マンハッタンS(GI)、アーリントンミリオン(GI)、そして締めくくりのブリーダーズカップターフ(GI)まで、GI・GII戦を無傷の6連勝。1年でトップクラスの芝レースを総なめにし、名実ともに北米芝界の頂点に立ちました。

距離はマイルから芝2400mまでこなし、切れ味と持続力のバランスに優れた万能型。いずれのレースでも上がり3ハロン最速級の末脚を繰り出し、差し・追い込みで着実に勝利を収めたのが特徴です。

この圧倒的なパフォーマンスが評価され、2019年のアメリカ年度代表馬(エクリプス賞)に選出されました。通算成績は13戦11勝、GI5勝。日本では2020年から種牡馬として供用されており、芝中距離向きの産駒に注目が集まっています。

得意コース

札幌芝2000m
洋芝適性が高く、持続力とパワーを兼ね備えた産駒が好走。小回りでもスムーズに立ち回れる器用さが強みで、直線の短さを苦にしない。

札幌芝1800m
洋芝でのスタミナとパワーが活きる条件。先行〜好位から長く脚を使うタイプが多く、時計のかかる馬場での粘りに定評がある。

函館芝2000m
直線の短い洋芝コースでも対応力が高く、タフな展開で持ち味を発揮。先行力と持続力を兼備したタイプが勝ち切るパターンが多い。

新潟芝2000m
広いコースでゆったり流れ、直線で長く脚を使える産駒が好走。スローペースからの瞬発力勝負にも対応可能。

新潟芝1600m
直線の長さを活かした切れ味が武器。折り合いの良さと最後まで脚色を落とさない持続力が結果につながっている。

東京芝2000m
切れと持続のバランスが求められるコースで安定感を発揮。スローからの上がり勝負にも強く、クラシック前哨戦でも活躍が期待できる。

東京芝1600m
広いコースと長い直線で瞬発力を発揮。後半のギアチェンジ性能が高く、差し・追い込みでも好走できるタイプが多い。

中山芝1600m
小回り+急坂のタフな条件でもパワー型産駒が好成績。先行して押し切るレース運びが得意で、道悪にも対応可能。

中京芝2000m
平坦でスピードの持続力が活きるコース。先行・差しともに安定しており、展開に左右されにくい。

阪神芝1600m
外回りの長い直線で切れ味を発揮できる舞台。坂を苦にしないパワーもあり、良馬場・稍重いずれの条件でも対応力が高い。

小倉芝1800m
小回りコースでの立ち回りが上手く、コーナーで加速できるタイプが多い。直線の短さを生かした先行押し切りも得意。

東京ダート1400m
芝スタートでスピードに乗りやすく、ダートでも終いまで脚を使えるタイプが好走。先行力と持続力のバランスが結果につながっている。

コルトサイアー傾向 牡馬に強みあり?

ブリックスアンドモルタルは牡馬に良質なスピードと先行力を伝える傾向が見られます。牝馬よりも牡馬の方が競走馬としての完成度が高く、勝ち上がり率も比較的良好。特に2歳戦からスピードを活かして先行するスタイルが目立ちます。

気性難の可能性 扱いに注意

一部の産駒には気性面での難しさが報告されています。テンションが高く、折り合いに苦労するケースもあり、調教段階での工夫が必要です。特に初出走や輸送時に気性が出やすいため、精神面のケアが重要となります。

内枠苦手 包まれると力を出せない

レース傾向として、内枠に入ると力を発揮しづらい産駒が多い印象です。包まれる展開になると気性の難しさも相まって、能力を出し切れないケースが見られます。外枠からスムーズに先行できる形が理想です。

スピードを活かした先行力 展開の鍵を握る

父譲りのスピード性能は産駒にも色濃く伝わっており、特に芝の短中距離で先行力を発揮します。スタートから積極的に前に行けるタイプが多く、展開次第では逃げ切りも可能。馬場が軽い時ほど持ち味が生きます。

小柄な産駒が多い

体格面では小柄な馬体の産駒が多い傾向があります。馬格に恵まれない分、軽快なフットワークを武器にしていますが、成長力や馬体の維持には注意が必要。特に牝馬は馬体重の増減に敏感なケースも。

芝での適性と完成度の高さ

ブリックスアンドモルタル自身が芝1800m~2000mを中心に無敗の連勝を続けたように、産駒にもその傾向が色濃く出ています。初年度から芝1600m~2000mを中心に好走しており、洋芝・野芝どちらにも対応。特に小倉・新潟の芝中距離での勝ち上がりが目立ち、スピードと持続力を兼ね備えた産駒が多いのが特徴です。

仕上がり早&完成度の高さ

初年度産駒は2歳夏から始動し、仕上がりが早いタイプが多い印象です。牝馬でもしっかりと仕上がっており、早期デビューして勝ち上がる馬が多いため、POGや2歳重賞戦線でも狙える存在と言えるでしょう。

現時点での代表産駒

アンモシエラ
牝 栗毛
母:サンドクイーン
母父:ゴールドアリュール
調教師:松永幹夫
馬主:広尾レース
生産者:桑田牧場
主な戦績:JBCレディスクラシック、ブルーバードC


イーグルノワール
牡 青鹿毛
母:アルティマブラッド
母父:シンボリクリスエス
調教師:荒山勝徳
馬主:社台レースホース
生産者:社台ファーム
主な戦績:兵庫ジュニアグランプリ、全日本2歳優駿2着


ラスカンブレス
牡 黒鹿毛
母:アースライズ
母父:マンハッタンカフェ
調教師: 林徹
馬主:吉田勝己
生産者: ノーザンファーム
主な戦績:六社S(3勝クラス)

芝・ダート適性

ここまでのブリックスアンドモルタル産駒の全体的な傾向としては、芝タイプが多くダートでは苦戦傾向にあります。これは、現役時代の成績から芝での活躍を期待され、サンデーサイレンス系の芝馬との配合が多いことも要因になっていると思われます。

ただし、ここまでの上位産駒は、JBCレディスクラシックとブルーバードCを勝ったアンモシエラや兵庫ジュニアグランプリを勝ち全日本2歳優駿でも2着に入ったイーグルノワールなど、ダート路線での活躍が目立ちます。

やはり、血統面からも本質的にはダートを得意とする可能性が高く、今後はダート系繁殖との配合でダート戦線で活躍する産駒が多く出てくることも考えられます。

このことから、ブリックスアンドモルタルは、配合次第で芝・ダートどちらも対応できる万能型とも受け取れます。今後の産駒の動向には注目したいところです。

総評

ブリックスアンドモルタル産駒は、芝中距離で早期から活躍できるポテンシャルを持ち、完成度の高さが魅力です。牝馬でもしっかり走る点は評価ポイントで、POG指名や2歳重賞戦線でも注目したい血統です。今後は、母系との配合により距離の融通や芝の質への適応の広がりが期待されます。