ブリックスアンドモルタル産駒の特徴と傾向を分析

ブリックスアンドモルタル産駒の特徴と傾向を分析 競馬

2019年のアメリカ年度代表馬に輝き、芝中距離で圧倒的な強さを見せたブリックスアンドモルタル。日本では2020年より種牡馬として供用され、2023年に初年度産駒がデビューを迎えています。本記事では現役戦績と血統に加え、中央競馬で走った産駒の出走データから「実際にどの条件で走っているか」を整理しました。アンモシエラのJBCレディスクラシック制覇に続き、2025〜2026年はダイヤモンドノット、ゲルチュタール、クランフォードといった重賞戦線の有力馬も次々と台頭してきています。

血統背景

Giant’s Causeway Storm Cat Storm Bird Northern Dancer
South Ocean
Terlingua Secretariat
Crimson Saint
Mariah’s Storm Rahy Blushing Groom
Glorious Song
Immense Roberto
Imsodear
Beyond the Waves Ocean Crest Storm Bird Northern Dancer
South Ocean
S.S.Aroma Seattle Slew
Rare Bouquet
Excedent Exceller Vaguely Noble
Too Bald
Broadway Lullaby Stage Door Johnny
リットルブレツシング

ブリックスアンドモルタルは、父Giant’s Causeway×母Beyond the Wavesという血統構成から生まれた、スピード・早熟性・精神力を高次元で兼ね備えた米国型の名馬です。

血統上の最大の特徴は、父Storm Catと母父Ocean Crestの双方にStorm Birdの血を持つStorm Bird3×3の濃いインブリードが成立している点です。これにより、スピード・早熟性・前向きな気性といった要素が強調されており、安定した先行力と粘り強い末脚、仕上がりの早さにつながっています。

現役時代の実績

ブリックスアンドモルタルはアメリカ芝路線で活躍した名馬で、2017年にデビューすると4連勝で重賞制覇を達成。その後一時休養を挟んで2018年末に復帰し、2019年には驚異の快進撃を見せました。

復帰初戦のペガサスワールドカップターフ(G1)を皮切りに、ムニス記念クラシックS(G2)、オールドフォレスターターフクラシック(G1)、マンハッタンS(G1)、アーリントンミリオン(G1)、そして締めくくりのジョーハーシュターフクラシック(G1)まで、G1・G2戦を無傷の6連勝。1年でトップクラスの芝レースを総なめにし、ブリーダーズカップ本番出走を待たずに引退が発表されました。

距離はマイルから芝2400mまでこなし、切れ味と持続力のバランスに優れた万能型。いずれのレースでも上がり3ハロン最速級の末脚を繰り出し、差し・追い込みで着実に勝利を収めたのが特徴です。

この圧倒的なパフォーマンスが評価され、2019年のアメリカ年度代表馬(エクリプス賞)に選出されました。通算成績は13戦11勝、G1・5勝。日本では2020年から種牡馬として供用され、初年度産駒が芝・ダート双方の重賞戦線で活躍を始めています。

実データで見る産駒の傾向

ここからは、中央競馬で走ったブリックスアンドモルタル産駒全頭の成績を集計した結果を紹介します。「芝中距離が得意」「洋芝適性が高い」といった肌感覚でよく言われてきた特徴と、実際の数字がどう対応しているのかを順に見ていきます。

① 全体集計|勝率9.3%・複勝率27.3%

総合
中央競馬での全成績
勝率9.3% / 連対率18.6% / 複勝率27.3%

平均人気は6.8前後、勝率9.3% / 複勝率27.3%。新種牡馬としてはまずまずの数字で、内訳を見るほど「どこで走るか」の輪郭がはっきり見えてきています。

② 実はダートのほうが勝率が高い

馬場 出走 複勝 勝率 複勝率
ダート 934 97 285 10.4% 30.5%
1,295 110 322 8.5% 24.9%

「父が芝のG1ホースだったから産駒も芝向き」というイメージで見られがちですが、数字で見るとダートのほうが勝率・複勝率ともに上です。アンモシエラのJBCレディスクラシック(JpnI)制覇、イーグルノワールの兵庫ジュニアグランプリ勝ちなど、ダート路線で名前が売れていくパターンが続いていて、データもそれを裏付けています。

③ 主戦場はダ1500-1600m(勝率16.0%・複勝率43.1%)

区分 出走 複勝 勝率 複勝率
芝〜1200m 119 10 25 8.4% 21.0%
芝1300-1400m 124 13 30 10.5% 24.2%
芝1500-1600m 301 26 81 8.6% 26.9%
芝1700-1800m 283 24 75 8.5% 26.5%
芝1900-2000m 311 25 83 8.0% 26.7%
芝2100-2400m 118 11 25 9.3% 21.2%
芝2500m以上 39 1 3 2.6% 7.7%
ダ〜1200m 108 9 29 8.3% 26.9%
ダ1300-1400m 213 25 74 11.7% 34.7%
ダ1500-1600m 144 23 62 16.0% 43.1%
ダ1700-1800m 359 30 93 8.4% 25.9%
ダ1900-2000m 43 6 15 14.0% 34.9%
ダ2100m以上 67 4 12 6.0% 17.9%

表のなかで突出しているのがダート1500-1600m。144戦・勝率16.0%・複勝率43.1%は全条件のなかでもトップクラスで、ここに出走してきたブリックスアンドモルタル産駒はまず軸候補から外せない数字です。続いてダ1300-1400m(勝率11.7%・複勝率34.7%)、ダ1900-2000m(勝率14.0%)も好成績。

一方で芝は勝率がほぼ全距離帯で8〜10%とフラット。記事の前半で書かれていた「芝中距離が得意」という印象とは違って、芝に限ればどの距離もそれほど決定的な差は出ていません。芝2500m以上だけは39戦・勝率2.6%・複勝率7.7%と明確に苦戦するので、長距離適性は限定的と見ておいたほうが安全です。

④ 性別 × 馬場|牝馬は芝で伸び悩み、ダートで一変

性 / 馬場 出走 複勝 勝率 複勝率
牝 / ダート 390 44 125 11.3% 32.1%
牡 / 芝 604 62 175 10.3% 29.0%
牡 / ダート 483 43 137 8.9% 28.4%
牝 / 芝 642 45 136 7.0% 21.2%

注目したいのは牝馬の馬場による落差です。牝馬は芝だと勝率7.0%・複勝率21.2%と4区分のなかで最も伸び悩みますが、ダートに替わると勝率11.3%・複勝率32.1%と最強水準に跳ね上がります。アンモシエラの戦績や、芝で凡走していた牝馬がダート転戦で一変するケースが、データレベルでも確認できる形です。「牝馬で芝の人気馬」は要警戒、「牝馬でダート替わり初戦」はむしろ拾いに行きたいパターンと言えます。

牡馬は芝・ダートどちらでも勝率8〜10%程度で大きな偏りはないものの、芝のほうが微妙に勝率が高め。「牡馬は芝、牝馬はダート」と覚えておくと馬券の整理がしやすくなります。

⑤ 競馬場別(芝)|「洋芝が得意」は新潟限定

競馬場 出走 勝率 複勝率
新潟 126 11.1% 23.8%
札幌 55 10.9% 20.0%
小倉 104 10.6% 23.1%
阪神 157 9.6% 27.4%
東京 204 9.3% 28.9%
中京 134 9.0% 28.4%
京都 204 6.9% 22.5%
函館 45 6.7% 17.8%
中山 175 6.3% 23.4%
福島 89 5.6% 24.7%

「洋芝適性が高い」とよく言われる血統ですが、実際にデータで支えられているのは新潟(126戦・勝率11.1%)くらいで、函館は45戦・勝率6.7%・複勝率17.8%と全競馬場で下から数えたほうが早い水準です。札幌は勝率10.9%だが複勝率は20.0%でやや伸び悩み、サンプルも55戦と多くありません。洋芝=得意というより、新潟の広いコースが得意と整理するほうが正確です。

逆に複勝率では東京(28.9%)・中京(28.4%)・阪神(27.4%)が安定。広いコースで脚を使えるレースが産駒の持ち味と噛み合いやすそうです。

⑥ 具体的なコース別の好走条件

距離・競馬場を組み合わせた具体的なコース単位の成績です。出走20戦以上の条件に絞っています。

コース 出走 複勝 勝率 複勝率
小倉芝1800m 38 6 13 15.8% 34.2%
中京芝1400m 26 4 8 15.4% 30.8%
新潟芝2000m 29 4 7 13.8% 24.1%
阪神芝1600m 49 6 17 12.2% 34.7%
東京芝1600m 66 8 19 12.1% 28.8%
中京芝2000m 45 5 14 11.1% 31.1%
東京芝2000m 28 3 12 10.7% 42.9%
中山芝1800m 45 4 14 8.9% 31.1%
京都ダ1800m 45 4 13 8.9% 28.9%
京都芝1800m 35 3 10 8.6% 28.6%
中山ダ1800m 82 7 17 8.5% 20.7%
新潟ダ1800m 28 1 7 3.6% 25.0%
阪神ダ1800m 51 2 15 3.9% 29.4%
中山芝2000m 50 1 6 2.0% 12.0%
阪神芝2000m 36 1 11 2.8% 30.6%

勝率トップは小倉芝1800m(38戦・15.8%)と中京芝1400m(26戦・15.4%)。広めの直線で脚を使える条件で結果を出しています。東京芝2000m(複勝率42.9%)と阪神芝1600m(複勝率34.7%)も、勝ち切れずとも複勝圏に絡む安定感があり、馬連・三連複の相手としては頼れるゾーンです。

逆に中山芝2000m(50戦・勝率2.0%)と阪神芝2000m(36戦・勝率2.8%)は明確な苦手条件。出走数は多いのに勝てておらず、人気馬で買うと痛いパターンです。中山芝の中距離は急坂で持続力勝負になりやすく、ブリックスアンドモルタル産駒の軽快さが活きにくいコースと言えそうです。

⑦ 2025-2026年で台頭してきた重賞・OP級の活躍馬

サンプル拡大によって、初年度産駒以降の有力馬が次々と見えてきました。重賞・OP級の主な活躍馬を整理しておきます。

  • ダイヤモンドノット(牡)|京王杯2歳S(G2)1着、朝日杯フューチュリティS 2着、ファルコンS(G3)1着、NHKマイルC 5着。2024-2025年の芝マイル路線最有力産駒。ルメール・川田と一線級が手綱を取っています。
  • ゲルチュタール(牡)|日経新春杯(G2)1着、菊花賞 4着。中長距離の本格派で、4歳以降の古馬中距離戦線でも上昇余地があるタイプ。
  • アンモシエラ(牝)|JBCレディスクラシック(JpnI)1着、ブルーバードC、エンプレス杯 3着。ダート牝馬路線のトップとして君臨。
  • クランフォード(牝)|六甲S(L)2着、阪神牝馬S(G2)4着、リゲルS。芝マイルの牝馬OP級。
  • イーグルノワール(牡)|兵庫ジュニアグランプリ 1着、全日本2歳優駿 2着。ダート2歳重賞勝ち馬。
  • ラスカンブレス(牡)|小倉記念 4着、メトロポリタンS、六社S(3勝クラス)。芝中長距離。
  • ゴンバデカーブース(牡)|ディセンバーS、ニューイヤーS。芝マイルOP級。

⑧ その他に見えてくる傾向

サンプル拡大しても完全には数字に出ないものの、現場で言われてきた以下のような傾向は今も観察できます。

  • 2歳戦からの仕上がりの早さ|初年度産駒(アンモシエラ・イーグルノワール・ダイヤモンドノット)はすべて2歳のうちに重賞または重賞級のレースで結果を出しており、新馬・未勝利クラスでの完成度の高さは継続して感じられます。POGや2歳重賞は引き続き注目しておく価値があります。
  • 気性の難しさ|一部の産駒でテンションの高さ・折り合い面の難しさが報告されています。初出走や長距離輸送時の影響を受けやすい個体がいるため、新馬戦・初輸送のレースでは過信は禁物です。
  • 馬体は標準〜やや小柄寄り|大型馬よりも軽快型が多めの印象。フットワークの良さと引き換えに、夏負けや馬体の維持にはやや気を遣う必要があります。

集計の前提

  • 対象: ブリックスアンドモルタル産駒のうち、中央競馬で1走以上した全産駒の全レース
  • 地方競馬・海外遠征の出走は含まれていません(アンモシエラのJBCレディスクラシック等は別途)
  • 確定着順のないレース(取消・出走中)は除外しています
  • 2026年5月時点でのスナップショットです

馬券での狙いどころ・避けるべき条件

上記のデータをもとに、馬券を組む際の判断軸を整理しました。


ダ1500-1600m
勝率16.0% / 複勝率43.1%

全条件のなかで最良のゾーン。出走してきたブリックスアンドモルタル産駒は軸候補から外せません。


牝馬のダート替わり
勝率11.3% / 複勝率32.1%

芝で凡走していた牝馬がダートに転戦してきたケースは要マーク。アンモシエラのような大物に化けるパターンがあります。


ダ1300-1400m / ダ1900-2000m
勝率11.7% / 14.0%

ダートの短距離・中距離どちらも好水準。マイル前後を中心に距離の融通は利きます。


新潟芝
勝率11.1% / 複勝率23.8%

広いコースで長く脚を使える条件が産駒の持ち味と噛み合うゾーン。「洋芝適性」と言われる本質は新潟向きと理解しておくと正確です。


2歳戦の人気馬
仕上がりの早さ

初年度から重賞を勝てる産駒が複数出ており、新馬・未勝利クラスでの完成度は信頼できます。POG・2歳重賞戦線は引き続き注目に値します。


芝のマイル〜中距離の人気馬
勝率8〜10%

父の現役時イメージで人気を背負いがちですが、データは平凡。芝で人気を被るブリックスアンドモルタル産駒は過信禁物です。

×
芝2500m以上の長距離
勝率2.6% / 複勝率7.7%

長距離適性は明確に劣ります。ステイヤーズSやダイヤモンドSのような舞台では基本的に切ってよさそうです。

×
函館芝
勝率6.7% / 複勝率17.8%

「洋芝=得意」のイメージとは裏腹に、函館芝では成績が伸びていません。札幌芝も決定的ではないので、洋芝なら新潟だけと割り切るのが安全です。

代表産駒

ダイヤモンドノット(牡)
主な戦績:京王杯2歳ステークス(G2)1着、朝日杯フューチュリティS 2着、ファルコンS(G3)1着、NHKマイルカップ 5着
2024〜2025年の芝マイル路線でブレイクした若き本格派。ルメール・川田と一線級ジョッキーが乗っており、今後の中距離転戦やマイル古馬戦線も含めて、ブリックスアンドモルタル産駒で最も注目すべき1頭です。


ゲルチュタール(牡)
主な戦績:日経新春杯(G2)1着、菊花賞 4着
2025年〜2026年で台頭してきた中長距離派。芝2400mの日経新春杯を1番人気で快勝しており、4歳以降の古馬中長距離戦線でさらに評価を上げてくる可能性があります。


アンモシエラ(牝・栗毛)
母:サンドクイーン/母父:ゴールドアリュール
調教師:松永幹夫/馬主:広尾レース/生産者:桑田牧場
主な戦績:JBCレディスクラシック(JpnI)、ブルーバードC、エンプレス杯(JpnII)3着
ダート牝馬路線のトップ。「牝馬/ダート」が産駒の最強カテゴリーであることを体現している1頭です。


クランフォード(牝)
主な戦績:六甲ステークス(L)2着、阪神牝馬ステークス(G2)4着、リゲルステークス(L)
芝マイル戦線のOP級牝馬。リステッドの常連で、今後の重賞挑戦が楽しみな存在です。


イーグルノワール(牡・青鹿毛)
母:アルティマブラッド/母父:シンボリクリスエス
調教師:荒山勝徳/馬主:社台レースホース/生産者:社台ファーム
主な戦績:兵庫ジュニアグランプリ、全日本2歳優駿 2着
ダートの2歳重賞を勝ち上がっており、3歳以降のダート古馬戦線でもさらなる成長が期待される1頭です。


ラスカンブレス(牡・黒鹿毛)
母:アースライズ/母父:マンハッタンカフェ
調教師:林徹/馬主:吉田勝己/生産者:ノーザンファーム
主な戦績:小倉記念 4着、メトロポリタンS、六社S(3勝クラス)
芝中長距離のOP戦線で安定して上位争いに加わっています。


ゴンバデカーブース(牡)
主な戦績:ディセンバーステークス、ニューイヤーステークス
芝マイルOP級。リステッド戦線で経験を積みながら重賞を狙えるポジションにいます。

総評|配合次第で芝・ダート両対応の万能型

記事の前半までは「芝中距離向きの新種牡馬」というイメージで語られがちでしたが、全産駒のデータを通して見えてきたのは、むしろダート寄り(特にダ1500-1600m)が真の主戦場であり、牝馬はダートで一変するタイプが多いという構図です。父ブリックスアンドモルタル自身は北米芝の頂点に立った馬ですが、日本で配合された産駒たちは、母系のダート色をしっかり受け継いでダート路線で結果を出してきています。

2025〜2026年に入ってダイヤモンドノット(芝マイル本格派)・ゲルチュタール(中長距離G2勝ち)・クランフォード(芝マイル牝馬)といった新世代の重賞戦線で戦える産駒が次々と出てきていて、種牡馬としての評価はここから一段上がってくる可能性が高いと見ています。馬券を狙うなら、まずはダ1500-1600mの出走馬と、牝馬のダート替わりから拾うのが、現時点で最も期待値の高いアプローチです。

種牡馬別産駒傾向まとめ