POG2025-2026シーズンが日本ダービーで幕を閉じました。この記事では、シーズン開幕前に「注目のキタサンブラック産駒」として挙げた7頭が実際にどんな結果を残したのか、JRAの公式記録をもとに答え合わせをしていきます。
当たった馬も、正直期待に届かなかった馬もいます。予想の検証も込みで、来季のPOG戦略の参考にしてもらえたらうれしいです。来季の指名候補はPOG2026-2027 注目馬・指名候補馬まとめにまとめています。
先に結論|注目7頭の成績一覧
開幕前に挙げた7頭の、シーズン終了時点での成績です。
| 馬名 | 戦績 | 主な結果 |
|---|---|---|
| リアライズグリント | 5戦2勝 | 雲取賞(JpnⅢ)勝ち。7頭で唯一の重賞タイトル |
| イクシード | 3戦2勝 | フラワーC(GⅢ)3着、5月に特別戦を勝利 |
| ブラックオリンピア | 5戦2勝 | アザレア賞を含む2連勝、青葉賞(GⅡ)3着 |
| ファムマルキーズ | 4戦2勝 | 新馬勝ちを含む2勝。短距離路線で堅実 |
| エムズビギン | 5戦1勝 | きさらぎ賞(GⅢ)2着、日本ダービー出走(14着) |
| ランブルスコ | 3戦1勝 | 5月に勝ち上がり |
| ダノンアスコルティ | 3戦0勝 | 期間内は未勝利。5月末に2着まで |
7頭中6頭が勝ち上がり、重賞勝ちは1頭という結果でした。POGのドラフト素材としては及第点だったと思いますが、クラシックの主役級には届かず。悔しいことに、この世代のキタサンブラック産駒でいちばん出世した馬は記事の外にいました(後述します)。
キタサンブラック産駒の特徴とは?
キタサンブラックは現役時代、天皇賞(春秋連覇)やジャパンC、有馬記念など数々のGⅠを制した名馬。産駒には以下のような傾向があります。
- 芝の中長距離に適性
- 晩成傾向だが、完成度高めの馬も多い
- 馬体に柔らかみがあり、長くいい脚を使えるタイプが多い
- イクイノックスのように、初年度から完成度が高い馬も出現
産駒の傾向はキタサンブラック産駒の特徴と狙い方で実データから詳しく解剖しています。
「牡馬の大物狙い・母父欧州型」は当たったのか
開幕前の記事では「基本は牡馬の大物狙い、母父欧州型が狙い目」と書きました。この見立てがどうだったかも検証しておきます。
半分当たりで、半分外れでした。この世代のキタサンブラック産駒で重賞を勝ったのは3頭。ダービー3着まで駆け上がったバステール(母父Aldebaran=米国型)、フェアリーSを勝ったブラックチャリス(母父トゥザワールド=日本型)、そしてダートの雲取賞を勝ったリアライズグリント(母父Malibu Moon=米国型)で、母父欧州型はむしろ不在。「牡馬の大物」という軸は生きていたものの、母父のタイプで絞り込むのは、この世代に関しては裏目でした。ちなみに「牡馬狙い」のほうはデータにもはっきり表れていて、勝ち上がり率は牡馬が38.2%(55頭中21頭)、牝馬が28.8%(59頭中17頭)。重賞3勝の内訳も牡2勝・牝1勝でした。
また、牝馬GⅠ馬がまだ出ていないという課題も持ち越しです。ブラックチャリスがフェアリーSを勝って期待させましたが、桜花賞は15着。イクシードも重賞タイトルには届いておらず、キタサンブラック産駒初の牝馬GⅠ制覇は来季以降のテーマになりました。
注目7頭の答え合わせ
ここからは開幕前に挙げた7頭を、当時のコメントと合わせて振り返ります。
リアライズグリント
牡 鹿毛
母:マドラスチェック
母父:Malibu Moon
厩舎:矢作芳人
馬主:今福洋介
生産者:追分ファーム
開幕前は「矢作調教師はダート馬と見立てているという情報もある」と紹介した馬。結果はその見立てどおりになりました。京都の芝2000mで2着を続けたあとダートに矛先を替えると、1月に勝ち上がり、2月には大井の雲取賞(JpnⅢ)を3番人気で制覇。今回の7頭では唯一の重賞ウィナーです。芝の良血イメージが強いキタサンブラック産駒がダート重賞を獲ったという意味でも、面白い結果でした。
イクシード
牝 黒鹿毛
母:シャトーブランシュ
母父:キングヘイロー
厩舎:木村哲也
馬主:シルクレーシング
生産者:ノーザンファーム
近親馬:イクイノックス、ヴァイスメテオール
イクイノックスの全妹。10月の新馬戦(東京芝2000m)を上がり33秒4・1番人気で快勝し、フラワーCでも1番人気に支持されましたが3着まで。それでも5月に東京芝1800mの特別戦カーネーションCを勝って2勝目を挙げており、3戦2勝と底は見せていません。「初の牝馬GⅠ」への期待は来季に持ち越しですが、指名した人はしっかりポイントを稼げた1頭だと思います。
ブラックオリンピア
牡 青鹿毛
母:ピノ
母父:Pierro
厩舎:友道康夫
馬主:サンデーレーシング
生産者:ノーザンファーム
デビューから2着・3着と勝ちきれませんでしたが、年明けに京都芝2200mで初勝利を挙げると、阪神芝2400mのアザレア賞も連勝。距離が延びて本領を発揮するあたりはいかにもキタサンブラック産駒らしいところです。ダービーの優先出走権がかかった青葉賞は1番人気で3着と、あと一歩のところでクラシックの舞台に届きませんでした。古馬になってからも息の長い活躍がありそうです。
ファムマルキーズ
牝 鹿毛
母:ダイワダッチェス
母父:ワークフォース
厩舎:大久保龍
馬主:吉田照哉
生産者:社台コーポレーション白老ファーム
開幕直後の6月に阪神芝1400mの新馬戦を勝ち、この記事でも「すでに勝ち上がり済み」と紹介していた馬。その後はりんどう賞5着などがありつつ、5月に京都芝1400mで2勝目を挙げました。シーズン明け6月の特別戦は12着に敗れましたが、中長距離の多いキタサンブラック産駒では珍しい短距離型として、堅実に賞金を積んでくれた1頭です。
エムズビギン
牡 黒鹿毛
母:デルフィニアII
母父:Galileo
厩舎:友道康夫
馬主:エムズレーシング
生産者:ノーザンファーム
近親馬:リラエンブレム、ベストミーエヴァー
2024年のセレクトセールで歴代2位となる5億9000万円(税抜)で落札された超高額馬。11月に東京芝2000mで勝ち上がると、きさらぎ賞で2着に入り、賞金を加算して日本ダービーの舞台まで駒を進めました。結果は15番人気14着と厳しいものでしたが、あの一戦だけで見限るのは早い血統・厩舎だと思います。勝ち星こそ1つでも「ダービーに出た」という事実はPOG的に大きく、話題性も含めて存在感のある1年でした。
ランブルスコ
牡 黒鹿毛
母:サマーハ
母父:シングスピール
厩舎:蛯名正義
馬主:金子真人ホールディングス
生産者:ノーザンファーム
近親馬:シャケトラ
12月の新馬戦2着のあと少し足踏みがありましたが、5月10日に東京芝2000mで勝ち上がり。ダービー週ぎりぎりに間に合った1勝で、POG的には「終盤に滑り込んでくれた」馬でした。シャケトラの近親らしく、本格化は古馬になってからかもしれません。
ダノンアスコルティ
牝 青鹿毛
母:アスコルティ
母父:Danehill Dancer
厩舎:萩原清
馬主:ダノックス
生産者:ノーザンファーム
近親馬:アスコリピチェーノ
牝馬ながらセレクトセールで4億円(税抜)という高額で取引された注目馬でしたが、POG期間内は3戦して未勝利。デビューが12月とやや遅れたのも痛かったところです。それでも5月末の東京芝1600mでは2着まで来ており、力を出しきれていない感はあります。血統的にここで終わる馬ではないはずで、勝ち上がってからの巻き返しに注目です。
正直に言うと、出世馬は記事の外からも出た
答え合わせとして書いておかないといけないのがここです。この世代のキタサンブラック産駒でもっとも出世した馬をはじめ、開幕前の記事で取り上げていなかったところから活躍馬が何頭も出ました。良血・高額馬を中心に注目馬を組み立てた本記事のアプローチでは拾いきれなかった馬たちで、来季への教訓も込めて、ここできちんと紹介しておきます。
バステール
牡
母:マンビア
母父:Aldebaran
厩舎:斉藤崇史
馬主:シルクレーシング
生産者:ノーザンファーム
この世代のキタサンブラック産駒で文句なしの出世頭です。12月に阪神芝2000mで勝ち上がると、3月の弥生賞ディープインパクト記念(GⅡ)を3番人気で勝利。皐月賞は11着に敗れたものの、日本ダービーでは11番人気ながら上がり34秒0の末脚で3着に激走しました。ノーザンファーム生産・シルクレーシングのクラブ馬ではあるのですが、開幕前は派手な取引額や超良血の話題馬の陰に隠れていた存在で、正直この馬を挙げられなかったのが今季いちばんの反省点です。
ブラックチャリス
牝
母:ゴールドチャリス
母父:トゥザワールド
キタサンブラック産駒の牝馬重賞ウィナーです。中長距離型の多い産駒には珍しく6月の函館芝1200mでデビュー勝ちすると、函館2歳Sで1番人気2着。年明けの1月にはフェアリーS(GⅢ)を5番人気で勝ちました。桜花賞は15着に終わりましたが、産駒のイメージにない早期始動・短距離型でここまで走ったのは驚きで、「キタサンブラック産駒=クラシック向きの晩成」という思い込みを崩してくれた1頭です。
ゴーラッキー
牡
母:ジェットセッティング
母父:Fast Company
厩舎:黒岩陽一
母のジェットセッティングは、2016年の愛1000ギニーであの名牝マインディングを破った実力馬。11月末に東京芝1800mの新馬戦を勝つと、2月に東京芝1600mで2勝目。ニュージーランドT(GⅡ)は2番人気6着に終わりましたが、シーズン明け直後の6月には東京芝2000mの特別戦も勝って、世代でも屈指の勝ち星を積み上げています。POG期間内だけでも2勝と、指名していれば十分に働いてくれた馬でした。
アンジュドジョワ
牝
母:ピースエンジェル
母父:Dark Angel
厩舎:福永祐一
デビューは2月の小倉とかなり遅かったものの、新馬戦から君子蘭賞へと連勝して、無敗のままオークスの舞台へ駒を進めました(結果は9着)。福永祐一厩舎の管理馬という話題性もあり、遅いデビューから一気に権利を取り切った勢いは来季以降も楽しみです。デビューの早い遅いだけでPOGの評価を決めつけてはいけない、という見本のような馬でした。
アメティスタ
牝
母:ティアーモ
母父:キングカメハメハ
厩舎:牧浦充徳
福島で勝ち上がったあと、1月に中山芝1600mの特別戦・菜の花賞を勝って2勝目。フラワーCは4着に終わりましたが、それでもこちらもオークスに出走しました(14着)。
このほかオークスには、12番人気ながら6着に健闘したレイクラシック(キタサンブラック産駒のオークス最先着)と、ロングトールサリー(11着)も出走しており、記事外の牝馬だけで4頭がオークスの舞台を踏んだことになります。さらに、阪神芝2400mのゆきやなぎ賞を含む2勝を挙げて青葉賞に向かったシャドウマスター(杉山晴紀厩舎)、芝2000mで2勝を挙げたチャリングクロスなども、記事では拾えていなかった勝ち上がり組です。来季以降は「高額馬・良血だけがPOGの正解ではない」という今季の教訓を活かしたいところです。
産駒全体の成績と勝ち上がり率比較
2023年生まれのキタサンブラック産駒全体では、2026年6月時点の実データ(中央のレースを中心とした集計)で出走114頭・勝ち上がり38頭。重賞勝ちは前述のバステール(弥生賞)、ブラックチャリス(フェアリーS)、リアライズグリント(雲取賞)の3頭でした。
主要種牡馬の同じ2023年生まれ世代と、勝ち上がり率を比べてみます。
| 種牡馬 | 出走 | 勝ち上がり | 勝ち上がり率 | 重賞勝ち |
|---|---|---|---|---|
| キズナ | 100頭 | 50頭 | 50.0% | 3頭 |
| エピファネイア | 104頭 | 46頭 | 44.2% | 3頭 |
| モーリス | 79頭 | 34頭 | 43.0% | 1頭 |
| コントレイル | 110頭 | 39頭 | 35.5% | 2頭 |
| キタサンブラック | 114頭 | 38頭 | 33.3% | 3頭 |
| ロードカナロア | 81頭 | 27頭 | 33.3% | 2頭 |
| サートゥルナーリア | 111頭 | 24頭 | 21.6% | 4頭 |
正直に言うと、勝ち上がり率33.3%はこの顔ぶれの中では中位です。キズナやエピファネイアのような「数も率も出す」種牡馬には見劣りしました。ただし出走頭数は比較した中で最多の114頭と層は厚く、春のクラシック4レース(桜花賞・皐月賞・オークス・ダービー)には7頭・のべ8回も産駒を送り込んでいます。最高着順はバステールのダービー3着、オークスでもレイクラシックが12番人気で6着に食い込みました。
前年産(クロワデュノールの世代)と同じ「デビューからダービーまで」のPOG期間で比べてみると、前年産は出走56頭・勝ち上がり20頭(35.7%)・重賞勝ち3頭。今季の世代は出走113頭・勝ち上がり38頭(33.6%)・重賞勝ち3頭でした。勝ち上がり率はほぼ同水準のまま、出走頭数が約2倍に膨らんだ計算です。血統登録も前年産の70頭から133頭へとほぼ倍増していて、種牡馬人気が一気に高まってから初めての大型世代でした。
違いが出たのは頂点の高さです。前年産はクロワデュノールが東京スポーツ杯2歳SとホープフルSを勝ち、POG期間の締めくくりに日本ダービーまで制しましたが、今季世代の重賞は弥生賞・フェアリーS・雲取賞で、2歳GⅠ級の大将格は現れませんでした。それでも芝の中距離からダート重賞、短距離まで幅広く走れることはこの世代でも証明されており、「キタサンブラック産駒を何頭か入れておく」戦略は来季も有効だと思います。勝ち上がり率で手堅く稼ぐならキズナやエピファネイアと組み合わせるのが現実的、というのがデータからの示唆です。
来季はどう狙うか|今季の実データからの示唆
最後に、今季の実データから、来季のPOGでキタサンブラック産駒を指名するときに使えそうな示唆を3つ挙げておきます。
1. 夏の2歳戦は我慢する
勝ち上がった38頭のうち、2歳のうち(2025年内)に初勝利を挙げたのは16頭で、残りの22頭は3歳になってからでした。特に6〜9月の夏の2歳戦で勝ち上がったのはわずか5頭。同じ期間のキズナ産駒が10頭だったのと比べても、夏はっきり動かない種牡馬です。11月ごろからまとまって勝ち始め、年明けから春に一気に来るのがこの産駒のリズムなので、指名するなら「序盤に稼げなくても切らない」前提で持っておきたいところです。デビュー戦にしても、いきなり勝ち上がったのは出走114頭のうち10頭と1割弱。一方で初戦2〜3着は26頭もいて、「初戦は勝ちきれず、2戦目以降で仕上げてくる」のが典型パターンです。新馬戦を取りこぼしたくらいで見限らないでください。
2. 本線は芝1600〜2200m、ただしダートも2割ある
この世代の勝ち星はのべ51勝で、内訳は芝40勝・ダート11勝。芝の勝ち鞍は1600〜2200mに34勝と集中していて、イメージどおりの芝中距離血統です。ただしダートも約2割あり、リアライズグリントのようにダート替わりで一変するケースは来季も頭に入れておいて損はありません。
3. 良血・高額馬だけに絞らない
本文で書いたとおり、今季の出世頭バステールは開幕前の話題の中心にいた馬ではありませんでしたし、母父のタイプ(欧州型など)での絞り込みも機能しませんでした。血統表の派手さやセールの取引額より、厩舎・仕上がり・デビュー時期の情報を優先したほうが、この種牡馬では結果につながりそうです。
なお、来季の対象となる2024年生まれのキタサンブラック産駒は、血統登録ベースで163頭。アーモンドアイの2024を筆頭に、大物繁殖牝馬の仔が多数控えている世代です。
さらにその先、2025年生まれにはイクイノックスの初年度産駒がスタンバイしています。詳しくはイクイノックス初年度産駒まとめで紹介しています。
まとめ|来季のPOGへ
注目7頭のうち6頭が勝ち上がり、重賞タイトル1つ、ダービー出走1頭。ただし世代最高の出世馬は記事の外から出た、というのが今季の正直な結果でした。
来季のPOG2026-2027に向けては、注目馬・指名候補馬まとめで2024年生まれの良血馬を一覧にしています。キタサンブラック産駒の傾向そのものは産駒の特徴と狙い方もあわせてどうぞ。


