ジャスタウェイは、秋の天皇賞でジェンティルドンナを4馬身ちぎり捨て、ドバイデューティーフリーをレコードで圧勝した「爆発力」の権化です。種牡馬としてもその傾向は強く、ハマった時の爆発力は現役種牡馬の中でも屈指。しかし、ハーツクライ系らしい「成長の遅さ」と「掴みどころのなさ」も併せ持っており、馬券的には非常に奥が深く、同時に一筋縄ではいかない血統です。
血統背景
| ハーツクライ | サンデーサイレンス | Halo | Hail to Reason |
| Cosmah | |||
| Wishing Well | Understanding | ||
| Mountain Flower | |||
| アイリッシュダンス | トニービン | カンパラ | |
| Severn Bridge | |||
| ビューパーダンス | Lyphard | ||
| My Bupers | |||
| シビル | Wild Again | Icecapade | Nearctic |
| Shenanigans | |||
| Bushel-n-Peck | Khaled | ||
| Dama | |||
| シャロン | Mo Exception | Hard Work | |
| With Exception | |||
| Double Wiggle | Sir Wiggle | ||
| Blue Double |
父ハーツクライに、母シビル(母の父Wild Again)という配合です。母父のワイルドアゲインは北米のタフなスピードを伝える血統で、これがハーツクライのスタミナと融合したことで、独特のパワーと持続力が生まれました。サンデーサイレンスの孫世代にあたりますが、主流のディープインパクト系とは異なる「重厚さと爆発力の同居」がこの血統のアイデンティティとなっています。
現役時代
通算成績22戦6勝。3歳時にアーリントンカップを制して以降、長く勝てない時期が続きましたが、4歳秋の天皇賞で覚醒。そこからの充実期は凄まじく、中山記念、ドバイ、安田記念とG1級を連勝しました。最大の特徴は、直線で他馬が止まって見えるほどの「超高速の末脚」です。この、一度エンジンがかかると止まらない凄まじい持続的な末脚が、産駒にも大きな武器として伝わっています。
得意コース・条件
ジャスタウェイ産駒は、父から受け継いだ「長く持続する末脚」と「パワー」が武器であり、これらが存分に活かせる条件で無類の強さを発揮します。
最も得意とするのは、東京・阪神(外回り)・新潟・中京といった直線の長いコースです。父同様、エンジンがかかってからトップスピードに乗るまでに時間を要する産駒が多いため、直線でゆったりと歩幅を伸ばし、持続的に脚を使い続けられる舞台でこそ真価を発揮します。1600mから2000mの芝コースにおいて、淀みのないラップが刻まれる展開になれば、他馬が苦しくなる地点からもう一段加速して突き抜けるような、底力のある走りを見せます。
ジャスタウェイ産駒を語る上で欠かせないのが、非常に高いダート適性です。ハーツクライ系の中でも母父ワイルドアゲインの影響からか、砂を被ることを苦にせず、タフな流れを力強く押し切る馬が多く出ています。芝でキレ負けしていた馬がダートに替わった途端、その持続力を活かして圧勝するケースは珍しくありません。特に1800m前後のダート戦は、馬券的な妙味も含めて最大の狙い目の一つとなります。
ハーツクライの血筋らしく、馬体の成長とともに距離の融通が利くようになるのも特徴です。3歳秋以降や古馬になってからは、スタミナを活かした長距離適性を見せる産駒も多く、タフな消耗戦になりやすい条件で信頼度が増します。馬券的には、人気が先行しやすい2歳戦よりも、身体がしっかりしてきてからの「直線の長いコースへの替わり」や「芝からダートへの初挑戦」のタイミングが、最も期待値の高い買い時となります。
苦手コース・条件
ジャスタウェイ産駒は、父や祖父ハーツクライから受け継いだ「大型で不器用」な面や「エンジンのかかりの遅さ」が、特定の条件下でマイナスに働く傾向があります。
最も苦手とするのは、「直線の短い小回りコースでのスローペース・上がり勝負」です。一瞬でトップスピードに乗るギアチェンジ能力に欠ける産駒が多く、中山や福島の内回りコースなどで一団のまま直線に向くと、加速が間に合わず、持ち前の持続力を発揮する前にレースが終わってしまうシーンが目立ちます。特に、スローの瞬発力勝負になりやすい少頭数の芝レースでは、キレ味の鋭いディープインパクト系などに屈するケースが多いのが特徴です。
身体が大きく、ゆったりと走らせたいタイプが多いため、「多頭数の内枠で馬群に揉まれる競馬」も得意ではありません。道中で進路が狭くなったり、他馬と接触してリズムを崩したりすると、大型馬特有の不器用さから立て直しに時間がかかってしまいます。スムーズに外に出して、自分のタイミングで長く脚を使える形にならないと、能力を出し切れずに凡走するリスクが高まります。
ダートやタフな馬場をこなすパワーはあるものの、意外にも「芝の重馬場・不良馬場」では極端にパフォーマンスを落とす馬が散見されます。父がドバイの高速馬場で世界一になったように、本質的には「スピードの持続力」を武器とするため、脚を取られるような泥んこ馬場では、その大きなフットワークが仇となり、推進力を失ってしまうことがあります。
馬券的には、人気を背負っている時の「中山・内回りのスロー予想」や、揉まれやすい「内枠の大型馬」には警戒が必要です。また、芝で良績を挙げてきた馬が、急にタフすぎる道悪条件に遭遇した際も、過信は禁物と言えるでしょう。
成長型の特徴
典型的な「晩成・持続型」です。 2歳の早い時期から勝ち上がる産駒もいますが、本領を発揮するのは3歳後半から古馬になってからです。ハーツクライ系特有の「成長放物線」を描き、一度本格化すると大崩れせず、重賞戦線に長く定着する頑健さを持っています。逆に言えば、若駒のうちは気性の激しさや馬体の緩さが目立ち、人気を裏切ることも多いため、見極めが重要になります。
総評
ジャスタウェイ産駒は、「人気薄での激走」を虎視眈々と狙うハンターのような血統です。 特に芝からダートへの転向、あるいは直線の長いコースへの替わりなど、適性が噛み合った瞬間の破壊力は計り知れません。常に「爆発する可能性」を秘めている反面、ムラ気なところもあるため、軸馬として信頼するよりは、高配当を演出する相手候補として非常に魅力的な種牡馬と言えるでしょう。
