2024年に初年度産駒がデビューし、2025年現在、種牡馬として存在感を見せているサートゥルナーリアについて解説します。
ロードカナロアの後継にして、名牝シーザリオの最高傑作の一頭。その「超良血」に違わぬ産駒たちの特徴を紐解いていきます。
血統背景
| ロードカナロア | キングカメハメハ | Kingmambo | Mr. Prospector |
| Miesque | |||
| Manfath | ラストタイクーン | ||
| Pilot Bird | |||
| レディブラッサム | Storm Cat | Storm Bird | |
| Terlingua | |||
| サラトガデュー | Cormorant | ||
| Super Luna | |||
| シーザリオ | スペシャルウィーク | サンデーサイレンス | Halo |
| Wishing Well | |||
| キャンペンガール | マルゼンスキー | ||
| レディーシラオキ | |||
| Kirov Premiere | Sadler’s Wells | Northern Dancer | |
| Fairy Bridge | |||
| Querida | Habitat | ||
| Principia |
サートゥルナーリアの血統は、日本競馬におけるスピードと完成度、そして中距離適性を語るうえで非常に分かりやすく、説得力のある構成となっています。
父はロードカナロアです。キングカメハメハ産駒の代表格であり、日本競馬史に残る名スプリンターとして知られています。父系を遡ると、Kingmambo~Mr. Prospector系のスピードとスケール感に、母Manfath(ラストタイクーン)由来の柔らかさが加わり、トップスピードの質と瞬時の加速力に優れた血統構成となっています。ロードカナロア産駒は総じてレースセンスが高く、サートゥルナーリアにもその完成度の高さが色濃く受け継がれています。
母は名牝シーザリオです。父スペシャルウィーク(サンデーサイレンス系)、母系にマルゼンスキーを持つ、日本競馬の王道路線を象徴する血統構成です。シーザリオ自身は日米オークスを制した実績を持ち、高い競走能力と安定感を兼ね備えていました。繁殖牝馬としてもエピファネイアなどの活躍馬を送り出しており、母系の優秀さは折り紙付きと言えます。
さらに、シーザリオの母Kirov Premiereに含まれるSadler’s Wellsの血は、サートゥルナーリアの持続力と芯の強さを下支えしている重要な要素です。この影響により、単なるスピード型ではなく、レース全体を通して脚を使える中距離向きの総合力が血統的に裏付けられています。
サートゥルナーリアの血統を総合すると、父系がもたらす鋭いスピードと高い完成度、母系が支える底力と持続力が高いレベルで融合した配合だと言えます。現役時代に見せた安定感のある走りは、この血統背景によるところが大きく、種牡馬としても配合次第でさまざまなタイプの産駒を送り出す可能性を秘めています。
得意コース・条件
サートゥルナーリア産駒は、父ロードカナロア譲りのスピードと、母系から引き継いだ豊かな持続力を兼ね備えており、芝の1600メートルから2000メートルの中距離を最も得意としています。特に、東京競馬場や新潟競馬場のような、直線が長く、持ち前の鋭い加速力を存分に活かせるコースでの信頼度が非常に高いのが特徴です。
馬場状態については、良馬場での時計勝負に強いのはもちろんですが、シーザリオの血筋に由来するパワーがあるため、開催が進んで荒れた芝や、多少の道悪であればこなしてしまう逞しさがあります。また、レースセンスが非常に高く、新馬戦や少頭数のレースでは、好位から上がり最速の脚を使って楽に抜け出すような、王道の競馬を数多く見せています。
苦手コース・条件
一方で、明確な苦手条件も徐々に見え始めています。まず、ダート適性については、芝での圧倒的なパフォーマンスに比べると一枚落ちる傾向があります。芝からダートへの替わり初戦で人気を裏切るケースも散見されるため、現時点では芝専用機として考えるのが妥当です。
また、距離の限界については、マイルから中距離で良さが出る反面、1200メートルといった極端な電撃戦では、エンジンの掛かりが遅く追走に苦労する場面があります。逆に、2400メートルを超えるような長距離戦では、気性の前向きさが仇となり、スタミナをロスして失速するリスクも考慮する必要があります。さらに、直線の短い小回りコースで、極端に上がりがかかるタフな展開になると、ディープインパクト系やハーツクライ系の持続力に屈することもあります。
成長型の特徴
成長曲線については、2歳の夏からデビューできる仕上がりの早さと、そこから枯れることなく伸び続ける持続性を併せ持っています。2024年にデビューした初年度産駒たちは、早期から高い勝ち上がり率を記録しており、3歳春のクラシック戦線に向けて着実に力をつけていく理想的なステップを踏んでいます。
特筆すべきは、一度使われた後の上積みが大きい点です。「新馬戦よりも2戦目」でパフォーマンスを大きく上げる馬が多く、実戦を経験することで精神面と肉体面のバランスが整い、より安定した走りができるようになります。完成度は高いものの、古馬になってもさらなる成長が期待できる、息の長い活躍が可能な成長型といえます。
代表産駒
ショウヘイ
牡 黒鹿毛
母:オーロトラジェ
母父:オルフェーヴル
調教師:友道康夫
馬主:石川達絵
生産者:ノーザンファーム
主な戦績:京都新聞杯、日本ダービー3着
ファンダム
牡 鹿毛
母:ファナティック
母父:ジャスタウェイ
調教師:辻哲英
馬主:キャロットファーム
生産者:社台コーポレーション白老ファーム
主な戦績:毎日杯
エストゥペンダ
牝 青鹿毛
母:エストレチャダ
母父:Offlee Wild
調教師:高柳瑞樹
馬主:ViridianKeibaClub
生産者:オリオンファーム
主な戦績:クイーンC3着、フェアリーS3着
コートアリシアン
牝 青鹿毛
母:コートシャルマン
母父:ハーツクライ
調教師:伊藤大士
馬主:吉田照哉
生産者:社台ファーム
主な戦績:新潟2歳S2着、ニュージーランドT3着
総評
サートゥルナーリアは、初年度産駒のデビュー以来、期待を裏切らない圧倒的な成績を収め、ディープインパクト亡き後の日本競馬における「新時代の絶対的エース」としての地位を完全に確立しました。
産駒は、新馬戦や未勝利戦での勝ち上がり率が極めて高く、実戦を経験するごとにパフォーマンスを上げる「競馬の巧さ」を持っています。特に、母父にサンデーサイレンス系を持つ牝馬との配合(ニックス)は、現代の日本の芝中距離戦線において最も信頼できる成功パターンの一つとなりました。
また、2025年に入ると、早期のスピードだけでなく、3歳春のクラシック戦線や古馬重賞でも通用する成長力が証明され始めています。兄のエピファネイアがスタミナと爆発力に寄っているのに対し、サートゥルナーリアはより「操縦性の高さと安定感」に長けており、どんな条件でも大崩れしにくい「優等生」な産駒を多く送り出しています。
今後は、単なる早期の勝ち上がりにとどまらず、芝のG1戦線を制圧するような大物の輩出が確実視されています。馬主、調教師、そして馬券検討者の誰もが無視できない、「現代日本競馬の王道を歩む中心核」と言える存在です。

