ワールドプレミアは、3歳時に菊花賞を制し、5歳時には天皇賞(春)で強豪を破って優勝した、まさに「盾男」武豊騎手と共に頂点を極めたステイヤーです。全兄にワールドエース、全弟にヴェルトライゼンデがいる日本屈指の良血馬であり、ディープインパクトのしなやかさに、母系の独国血統由来の底力が融合した稀有な血統構成を持っています。産駒にもその豊かなスタミナと、大舞台で崩れない勝負根性が色濃く反映されています。
血統背景
| ディープインパクト | サンデーサイレンス | Halo | Hail to Reason |
| Cosmah | |||
| Wishing Well | Understanding | ||
| Mountain Flower | |||
| ウインドインハーヘア | Alzao | Lyphard | |
| Lady Rebecca | |||
| Burghclere | Busted | ||
| Highclere | |||
| マンデラ | Acatenango | Surumu | Literat |
| Surama | |||
| Aggravate | Aggressor | ||
| Raven Locks | |||
| Mandellicht | Be My Guest | Northern Dancer | |
| What a Treat | |||
| Mandelauge | Elektrant | ||
| Mandriale |
ワールドプレミアは、父ディープインパクト、母マンデラ(母の父Acatenango)という、日本とドイツの最高級の血が融合した超良血馬です。この血統構成は、産駒の「スタミナの絶対量」と「底力」を裏付ける重要な要素となっています。
母マンデラはドイツの重賞勝馬であり、ドイツオークス(G1)3着の実績を持つ名牝です。その父アカテナンゴ(Acatenango)はドイツの伝説的な名馬であり、種牡馬としても重厚なスタミナを伝えることで知られています。ディープインパクトにこのドイツ血統が組み合わさることで、単なるスピード型ではない、タフなスタミナと、長い距離でバテない持続性能が引き出されています。
また、兄弟の活躍も特筆すべき点です。全兄には皐月賞・日本ダービーで1番人気に支持され、マイラーズカップをレコード勝ちしたワールドエースが、全弟には日本ダービー3着、日経新春杯などを制したヴェルトライゼンデがいます。兄弟の中でもワールドプレミアは最もスタミナに特化し、長距離適性を強く見せたタイプですが、根本にはディープインパクト系らしい質の高い筋肉と、トップレベルの競走能力を安定して輩出する「名牝系の活力」が流れています。
この日本屈指のフィジカルと、欧州(ドイツ)の重厚なスタミナの組み合わせこそが、産駒が「距離が延びてこそ真価を発揮する」最大の根拠となっています。
現役時代
現役時代は12戦4勝。体質の弱さから大事に使われましたが、3歳春のクラシックから5歳春まで常に第一線で活躍し続けました。特筆すべきは、菊花賞で見せた最内強襲の鋭さと、天皇賞(春)で見せた先行押し切りのタフさです。ディープインパクト産駒としては珍しく、スタミナ勝負になればなるほど他馬を突き放す持久力を発揮しました。また、有馬記念で3着に2度食い込んでいるように、中山の急坂やタフな馬場も苦にしない万能な身体能力を誇りました。
得意コース・条件
産駒の主戦場は、芝2000メートル以上の中長距離です。 父同様に「広いコースでの持続力勝負」を得意としており、東京や京都、阪神の外回りコースでじわじわと加速し、長い直線で脚を使い切る形が理想的です。また、母系のドイツ血統の影響から、時計の速い高速馬場よりも、開催が進んで力の要るようになった芝や、スタミナが問われる洋芝の札幌・函館で高い適性を見せます。距離が伸びれば伸びるほど、他系統が息切れする中で相対的に浮上する「スタミナの絶対量」が最大の武器です。
苦手コース・条件
苦手とするのは、1600メートル以下のマイル戦や、一瞬の加速力のみが問われる「極限のスローペース」です。 エンジンがかかるまでに時間を要するタイプが多く、短距離のスピード決着では追走に苦労し、本来の力を出す前にレースが終わってしまいます。また、ダート適性も現時点では高くなく、砂の深い場所で機敏に動く器用さには欠けます。小回りの内回りコースで、コーナーから一気にスパートするような立ち回り勝負も、不器用さが露呈して取りこぼすリスクがあります。
成長型の特徴
成長型は、典型的な「晩成・持続型」です。 初年度産駒の動向を見ても、2歳の早い時期から勝ち上がる馬は少なく、3歳の春から秋にかけて体が定まってくるにつれて成績を上げる傾向が顕著です。ディープ系らしいしなやかさを持ちつつも、骨格が完成して真価を発揮するまでには時間を要します。しかし、一度本格化すれば古馬になっても成長が止まらず、長距離重賞戦線で長く活躍できる「息の長い競走生活」が期待できるのがこの血統の大きな魅力です。
代表産駒
ロブチェン
牡 鹿毛
母:ソングライティング
母父:Giant’s Causeway
調教師:杉山晴紀
馬主:フォレストレーシング
生産者:ノーザンファーム
主な戦績:新馬戦
総評
ワールドプレミア産駒は、現代競馬において希少となった「正当派ステイヤー」の血を引く存在です。 短距離戦での数字だけを見れば「苦戦」と映るかもしれませんが、距離が2000メートルを超えてからが真の本番です。馬券的には「距離延長」や「未勝利戦の長距離条件への出走」が最大の狙い目となります。じっくりと成長を待ち、クラシックディスタンスから超長距離でその真価を見守るべき、ロマンと実益を兼ね備えた血統と言えるでしょう。

